岡山大学 農学部 プレスリリース 岡山大学農学部の公式サイト。 / 2021-12-16 【プレスリリース】植物の免疫応答を抑制する化合物を発見-植物免疫応答を解明するための新たなツール- /agr/release.php?id=73  理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター植物免疫研究グループの白須賢グループディレクター、石濱伸明研究員、岡山大学学術研究院環境生命科学学域の能年義輝研究教授らの国際共同研究グループは、ヒトの非ステロイド性抗炎症薬[1]であるテノキシカムに植物の免疫応答を抑制する作用があることを発見しました。  本研究成果は、植物の免疫機構の理解や耐病性を制御する技術開発に貢献すると期待できます。  非ステロイド性抗炎症薬として知られるサリチル酸は、植物体内では耐病性を亢進する内生のシグナル分子として働きます。しかし、サリチル酸が植物細胞内でシグナルを伝える仕組みには、まだ不明な点が残されています。  今回、国際共同研究グループは、新たに化合物ライブラリーから植物の免疫応答を抑制する化合物として、化学構造の類似した3種類のオキシカム系非ステロイド性抗炎症薬(テノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム)を同定しました。さらに、テノキシカムが細胞内の酸化還元状態を酸化側に傾かせること、そしてサリチル酸で発現が上昇する遺伝子群を広範に抑制することを示し、サリチル酸のシグナル伝達機構の一端を明らかにしました。  本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』(12月15日付)に掲載されます。 詳細は下記リンク先をご覧ください。 2021-12-15 【プレスリリース】世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~ /agr/release.php?id=72  岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の宮竹貴久教授、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの田中啓介助教、玉川大学農学部の佐々木謙教授らの共同研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキにおいて、死んだふり時間の異なる育種系統間でゲノム全体のDNA リシークエンス解析によってゲノム特徴を比較しました。DNA 変異は動く(死んだふりしない)系統より動かない(死んだふりする)系統で多くみられました。その中でドーパミン代謝系関連遺伝子群では複数の変異が見られ、対捕食者回避にドーパミン関連遺伝子が重要なことが分かりました。ほかにもカフェイン代謝系、シトクローム(酸化還元酵素)代謝系、寿命制御系、概日リズム制御系にも変異が見られ、死んだふりという戦略にも複雑な分子基盤が関与することが明らかとなりました。生物が生き延びるために選択する動きを支配する主要な遺伝子はドーパミンと、生活史を制御する複数のタイミングに関連する遺伝子が関与していることを、今回、世界に先駆けて明らかにしました。本研究成果は、11 月8 日英国時間午前10 時(日本時間8 日午後7 時)に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports 」(Nature Publishing Group)に掲載されます。今後、人間を含めた動物の動きを制御する仕組みの解明に繋がると期待されます。 詳細は下記リンク先をご覧ください。 2021-11-08 【プレスリリース】夏季における牛の受胎率低下の一因を解明~猛暑は人間だけでなく、牛にも大きな影響~ /agr/release.php?id=71  岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)木村康二教授、山本ゆき准教授、同大学院環境生命科学研究科卒業生・酒井駿介博士(現小野薬品工業株式会社研究員)と東京農業大学の研究グループは牛の夏季の受胎率低下原因の一つが子宮内膜内の免疫機能の異常によるものであり、これは子宮内膜細胞の小胞体ストレス応答によって引き起こされていることを明らかにしました。  地球温暖化は農業生産に大きな影響をおよぼしていますが、牛においても特に夏季の暑熱ストレスによって受胎率が低下しています。この暑熱による夏季の受胎率低下の原因については明らかとなっていませんでした。本研究から暑熱ストレスは子宮内膜細胞での小胞体ストレス応答を介して免疫細胞の誘引を促す物質であるケモカイン分泌に影響をおよぼし、免疫細胞の局在を変化させることによって、分娩後の子宮内膜炎からの回復が遅れてしまう結果、受胎率が低下する可能性が考えられました。  これらの研究成果の一部は10月14日、「Journal of Cellular Physiology」にオンライン掲載されました。本成果は牛などの家畜における夏季の受胎率低下を防ぐ技術の開発を通して、畜産経営への安定化・食料の持続的供給に貢献すると期待されます。 詳細は下記リンク先をご覧ください 2021-10-15 【プレスリリース】オリーブ由来新素材 「Bオリボール(B-Olivol)」 含有化粧品を新発売! /agr/release.php?id=70  岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)生理活性化学研究室は、天然成分を微生物で処理(微生物変換)する新規活性物質の創生研究に取り組んできました。この度、【岡山オリーブ成分微生物変換高機能化研究コンソーシアム(岡山大学・日本オリーブ㈱・岡山県工業技術センター)】で『オリーブ葉成分の微生物による高機能化研究』を実施したところ、オリーブ葉抽出液を、オリーブ花から単離した黒酵母で処理して新規の抗酸化成分【Bオリボール(B-Olivol)】を創生することに成功し、その効率的生産法を確立しました。10月21日(木)にその活性成分を含む化粧液「オリーブマノン エスペランサ エマルシオン」を新発売します。 詳細は下記リンク先をご覧ください 2021-09-29 【プレスリリース】「忘れ貝」可憐な新種とそのゆくえ 万葉集・土佐日記にいう貝たちの「もののあはれ」と「鎖国の名残」 /agr/release.php?id=69  岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の福田宏准教授、大阪市立自然史博物館の石田惣主任学芸員、西宮市貝類館の渡部哲也学芸員、香川県水産試験場の吉松定昭元場長、国立科学博物館の芳賀拓真研究員の共同研究チームは、従来分類が極端に混乱していた日本周辺産ワスレガイ属(Sunetta)貝類の網羅的な分類学的再検討を行い、3新種(現生:ベニワスレ、化石:モシオワスレ・シチヘイワスレ)ほか5種(タイワンワスレ・シマワスレ・ランフォードワスレ・ワスレガイ・ミワスレ)の計8種を認知して、それらの種の実体、定義、識別点、分布域等を初めて明確化しました。現生種のうちミワスレを除く5種は日本周辺に固有で、それら全てが浅海環境の悪化によって減少傾向にあるか、またはもともと産出例の少ない稀少種と判明しました。  本研究成果は7月14日、日豪共同刊行の軟体動物学雑誌「Molluscan Research」にオンラインで掲載されました。 詳細は下記リンク先をご覧ください 2021-07-16 安場 健一郎教授が農業情報学会「学術普及賞」を受賞 /agr/release.php?id=68  本学学術研究院環境生命科学学域(農)の安場 健一郎教授が、令和3年5月22日に農業情報学会「学術普及賞」を受賞しました。  受賞理由は、10年ほど前まで温室の環境制御は手動もしくはデータが残らない簡便な自動制御が普通に行われていたものを、データに基づいた環境制御を普及させるために、当時開発が進んでいたユビキタス環境制御システム(UECS)に着目し、施設園芸のスマート化に取り組んだこと、UECSの運用ルールを明文化し、簡便な情報収集の方法を提案し、UECSに準じた機器開発を容易にするための取り組みを実施したことなどです。  なお、岡山大学が中心となって開発したUECSに対応した環境制御コントローラYoshiMaxは市販化され多くの生産者に利用されています。 2021-06-10 【プレスリリース】天敵による捕食行動が昆虫の繁殖力を増加させる /agr/release.php?id=67  岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の岡田賢祐准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の香月雅子研究員(日本学術振興会特別研究員)、東京都立大学大学院理学研究科の岡田泰和准教授らの研究グループは、害虫であるオオツノコクヌストモドキのメスの繁殖力が、その天敵であるコメグラサシガメの存在下で、増加することを明らかにしました。本研究成果は、令和3年6月8日(火)午後6時(日本時間)に Nature Communications電子版に掲載されました。  従来、天敵の存在によってオスとメスの繁殖が抑制されると考えられていますが、本研究は従来の定説を覆す発見です。この矛盾はオオツノコクヌストモドキにおけるオスとメスの対立関係に由来します。本研究は、生物の繁殖に関する新たな理論を提示するだけでなく、天敵を使った害虫防除法の技術開発においても考慮すべき知見であり、基礎・応用研究の両方で役立つことが期待されます。 詳細は下記リンク先をご覧ください。 http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id839.html 2021-06-08 根本理子助教が「令和2年度 マリンバイオテクノロジー論文賞」を受賞 /agr/release.php?id=66  令和3年5月15日、根本理子 助教が「令和2年度 マリンバイオテクノロジー論文賞」を受賞しました。 【受賞内容】 令和2年度マリンバイオテクノロジー論文賞 Comparative Gene Analysis Focused on Silica Cell Wall Formation: Identification of Diatom Specific SET Domain Protein Methyltransferases Michiko Nemoto, Sayako Iwaki, Hisao Moriya, Yuki Monden, Takashi Tamura, Kenji Inagaki, Shigeki Mayama & Kiori Obuse Marine Biotechnology Volume 22, Issue 4 (August), 2020, pp 551-563 2021-05-21 久保康隆教授が「2021年度 園芸学会学術賞」を受賞 /agr/release.php?id=64  本学大学院環境生命科学研究科の久保康隆教授が3月27日に「2021年度 園芸学会学術賞」を受賞し、3月27日〜28日に開催された園芸学会2021年度大会において受賞講演を行いました。 今回の久保教授の受賞は「果実の成熟・軟化機構に関する研究-エチレン誘導性成熟と低温誘導性成熟の分子機構解析とその利用-」と題するもので、長年に渡る果実の成熟機構に関する研究が高く評価され、同賞の受賞が決定しました。研究内容の概略は以下の通りです。 ⒈ メロンやセイヨウナシ、トマトにおいて、エチレン処理、その作用抑制剤(1-MCP) および遺伝子組換え技術やマクロアレイ技術を用いて成熟制御機構を解析し、エチレン信号は成熟開始時だけではなく、その後の成熟進行にも必須であることを明らかにした。 ⒉ キウイフルーツは、リンゴと一緒に袋に入れると果実軟化が促進されるように、その果実成熟はエチレンによってのみ誘導されると考えられてきた。ところが、久保教授らは、病害によるエチレン発生の影響を除外すると、キウイフルーツ果実は、低温遭遇によって、エチレン生成を伴わずとも成熟・軟化が誘導されること、RNAseq 解析により、エチレン誘導性成熟と低温誘導性成熟の二つは独立した信号伝達系で制御されていることを示した。 ⒊ キウイフルーツやレモン、セイヨウナシの低温誘導性の成熟・軟化・着色促進は樹上でも、低温貯蔵下と同様の分子メカニズムで起こっていることを示した。秋季の気温低下に反応して種々の樹木の紅葉が進むように、多くの温帯性果実の成熟・老化も低温遭遇により促進されると考えられる。 ⒋ 低温遭遇で成熟誘導されたキウイフルーツやカンキツ果実は成熟・老化の進行が緩慢で適食・棚持ち期間が長い特性を持ち、貯蔵、流通技術の改善に直結する。果実の低温誘導性成熟の解析は果実成熟生理研究とその応用に新たな展開を開くことをが期待できる。  同賞は、園芸学会が優れた学術的あるいは技術的業績に対して授与されるものです。 園芸学会賞受賞者:http://www.jshs.jp/modules/about/index.php?content_id=38 【連絡先】 久保 康隆(教授) 岡山大学大学院環境生命科学研究科(農学部) Email: ykubo (a) okayama-u.ac.jp 2021-04-23 【プレスリリース】機械学習(Sparse解析)とゲノム編集を活用した抗ウイルス活性物質の増産~眠れる宝の山,核酸系抗生物質の社会実装を目指す~ /agr/release.php?id=65  岡山大学学術研究院 環境生命科学学域の田村 隆教授と山本倫生准教授,坂本 亘教授,および京大,東大,神戸大などの共同研究グループは,抗ウイルス活性,抗原虫活性,抗真菌活性を持つ核酸系抗生物質シネフンギンの増産技術を開発しました。シネフンギンは発酵生産にかかわる遺伝子群が休眠状態にあり,極微量(< 2 ppm)しか生産されません。そこで遺伝子発現のボトルネックである転写装置RNAポリメラーゼ(RNAP)を任意に改変できるゲノム編集技術を開発しました。次にRNAPの突然変異効果の文献データをアミノ酸パラメータAAIndexに参照してSparse解析を行い,機械学習に基づく多重変異コードを設計しました。ゲノム編集技術を用いて変異導入した結果,高生産株が得られました。さらに量子化学計算により変異導入箇所はRNAPの内部アミノ酸残基とmRNAの強い相互作用が示され,今後の変異設計に利用できる新知見が得られました。これらの成果は令和3年1月20日、日本農芸化学会英文誌Biosci. Biotechnol. Biochem.に掲載されました。本研究成果はウイルス感染症の治療薬として期待されながら社会的にまったく利用されていない核酸系抗生物質の実装化に導く重要な起点になると期待されます。 詳細は下記URLをご覧ください 2021-04-22